保育園における避難訓練のねらい

保育園では、消防法により防災訓練の一環として避難訓練の実施が義務づけられており、少なくとも月に1回以上実施しなくてはいけないと規定されています。
保育園での避難訓練には、突然の災害時に職員や子どもたちが冷静かつ安全に避難できるようにするだけでなく、保護者の防災意識を高めたり保護者との連携を強化したりするねらいもあります。

ねらい|保育士・職員の判断力や対応力を向上させる

万が一災害が起きた際、保育士や職員は、子どもたちの安全を守るため、冷静に判断し、適切な指示や行動を取ることが何よりも重要です。
避難訓練は、保育士や職員が災害時の動線を確認したり、冷静な判断力や状況に応じた対応力を養ったりする目的があります。
また、定期的に訓練を行うことで、子どもたちへの指示の仕方や保護者への連絡・引き渡し方法などを確認・改善する機会にもなります。

ねらい|子どもたちに避難行動を定着させる

避難訓練を繰り返し実施することで、子どもたちは保育士の話をよく聞き、安全に行動できるようになります。
訓練には、子どもたちが災害時の流れを理解し、落ち着いて避難できる力を育てるねらいもあります。
災害時の避難行動を定着させることで、家庭など保育園以外の場所で被災した際にも身を守る行動ができるようになるでしょう。

ねらい|保護者との連携を強化する

保育園で被災した場合、子どもたちを保護者に安全に引き渡すことは園の重要な責務のひとつです。
避難訓練では、保護者との情報共有方法や引き渡し手順を再確認し、保護者との連携を強化するねらいもあります。
また、保育時間中だけでなく、登降園の途中で被災した場合の対応なども確認し共有することが大切です。

保育園の避難訓練に向けた事前準備

避難訓練を行う際は、防災計画を立てたり防災グッズを見直すなど、しっかりと事前準備を整えておくことが大切です。

防災計画の作成

多くの保育園では、主に「地震・火災・水害・不審者対応」の避難訓練が行われています。
それぞれの訓練の実施日や訓練内容など、年間を通してしっかりと防災計画を立てることが大切です。
年間の防災計画が決まったら、具体的な訓練内容や訓練のスケジュール、必要な準備物などもあらかじめ確認しリストアップしておきましょう。

防災グッズや防災かばんの準備

避難訓練を行う際には、防災グッズをすぐに持ち出せるよう、防災かばんを準備しておくことも大切です。
防災グッズが揃っているかどうかリストを確認するだけでなく、非常食や粉ミルク、離乳食などの消費期限懐中電灯やラジオの電池残量なども定期的に点検しましょう。

【災害別】保育園の避難訓練の実施内容

ここでは、主な避難訓練の内容と流れについて災害別にご紹介します。

地震の場合

①地震発生時

  • 窓や大きな家具から離れ、机の下にもぐるなど安全確保の行動を指示
  • ヘルメットや防災頭巾等で頭を保護(乳児は布団などで保護)
  • 窓や扉を全開にして避難経路を確保

②揺れが収まった時
  • 近くに火元がある場合は、ガス栓を閉めて指差し確認
  • 子どもの人数を確認し、靴や上履きを履かせる
  • 防災かばんを持ち出す

③避難誘導
  • 避難経路・避難場所を確認
  • 子どもの人数を確認し、余震や落下物に注意しながら移動
  • 手順に従って保護者へ連絡し、子どもを引き渡す



火災の場合

1.火災発生時

  • 非常ベルが鳴ったら子どもを集めて火元を確認
  • 避難経路を確認し、窓を閉める
    ※火災発生場所に取り残された場合、窓から救助する可能性があるため開けておく場合もある

2.避難および消火
  • ハンカチやタオルで鼻と口を覆い、低い姿勢で避難
  • 火災発生を通報
  • 消火器などで消火活動を行う(可能な範囲で)

3.安全確認および引き渡し
  • 子どもたちを安全な場所に移動させ、人数確認
  • 手順に従って保護者へ連絡し、子どもを引き渡す



水害の場合

1.水害発生時

  • 天気予報やハザードマップを確認
  • 状況を把握し、避難経路を確保
  • 強風によるガラス飛散防止のため、窓やカーテンを閉める

2.避難誘導
  • 子どもたちを安全な場所へ誘導し、人数確認
  • 浸水の危険がある場合は、建物の高い場所へ避難

3.引き渡し
  • 手順に従って保護者へ連絡し、子どもを引き渡す



不審者が侵入した場合

1.通報と安全確保

  • 警察に通報
  • 子どもたちを集め、人数を確認

2.避難
  • 状況を見て安全な場所へ避難
  • 子どもの人数を再確認

3.引き渡し
  • 手順に従って保護者へ連絡し、子どもを引き渡す



子どもたちに防災方法を伝えるコツ

災害発生時には、保育士や職員の的確な指示に加え、子ども自身が落ち着いて行動できることも重要です。
避難訓練の際に、災害の怖さや防災の大切さを分かりやすく伝えることで、子どもたちが防災に関心を持ったり防災への意識を高めたりすることにも繋がるでしょう。
ここからは、災害や防災について子どもたちに分かりやすく伝えるコツをご紹介します。

災害時の合言葉「お・か・し・も・ち」

災害時の基本行動を分かりやすく伝えるには、「お・か・し・も・ち」の合言葉がおすすめです。

お・・・おさない
か・・・かけない
し・・・しゃべらない
も・・・もどらない
ち・・・ちかづかない


「お・か・し・も・ち」の合言葉に合わせて、ひとつひとつの動作を子どもたちと一緒に確認することで、基本行動を頭と身体の両方で理解できるようになるでしょう。

頭を守る「ダンゴムシポーズ」競争

災害の中でも特に地震の際は、「頭を守ること」が命を守る大切な防災行動のひとつです。
頭を守る行動を子どもたちに覚えてもらうには、手で頭を覆いながら身体を小さする「ダンゴムシポーズ」がおすすめです。
「誰が一番早いかな?せーの!ダンゴムシ!」と声をかけて、ダンゴムシポーズ競争をすることで、素早く行動する意識が高まります。

絵本やクイズで伝える

災害は怖いものですが、子どもたちには過度な恐怖心を与えないよう、絵本やクイズを活用して伝えると良いでしょう。
「地震が起きたら一人で逃げる!○か×かどっちかな?」など、○×クイズを通じて楽しく学べるようにしましょう。

避難訓練を通して防災意識を高めよう!

災害はいつ起こるか分かりません。だからこそ、保育園では日頃から防災意識を高め、いつでも冷静に行動できるよう備えておくことが大切です。
避難訓練を行う際には、防災計画をしっかりと立て、子どもたちにも分かりやすく伝わる工夫を心がけましょう。

お子さまに丁寧に寄り添った保育を目指すアルファコーポレーションでは、お子さまの大切な命を安全に守るため、防災訓練を実施するだけでなく、社員全員が救命講習を受講し、定期的に救急訓練も行っています。
訓練の様子については、こちらの記事でも紹介していますのでぜひご覧ください。
   

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