本記事では、クレアナーサリー千住大橋がとうきょうすくわくプログラムを通して行った3歳児クラスの探究活動の様子を紹介します。
日々の散歩や探索の中で芽生えた子どもたちの自然への関心は、やがて虫へと派生します。気になったことを図鑑で調べたり、虫地図づくりをしたり。さらに公園での再探索へとつながっていきました。活動の過程で見られた子どもたちの変化とともに、保育者自身の気づき、園全体として得られた学びについてもお伝えします。

日常の中で広がっていた「自然」に対する興味関心

今回、すくわくプログラムのテーマを「自然」とした背景には、子どもたちの日常の姿がありました。4月の暖かくなって散歩に出かける機会が増える中で、線路わきの緑道や公園を歩くたびに、子どもたちが虫や花、土の様子に敏感に反応する姿がよく見られるようになりました。

散歩中も子どもたちはキョロキョロ周りを見渡しながら、
「○○あったね」
「これ、おうちの近くでも見たよ!」
と、見つけたものを言葉にする場面が増えていきました。

また、散歩中に撮った写真を園内に掲示すると、
「これ、○○だよ」
「前とちがうね!」
と、自分が気づいたことを先生やお友だちに伝えようとする姿が見られました。

そうした姿から、「自然」という大きなテーマを入口にしながら、その時々の子どもたちの興味や関心に沿って小さなテーマを設けていく方針ですくわくプログラムをスタートしました。

虫はどこにいるのだろう?

今年はいつも以上に散歩や自然探索活動の機会を多く取り入れました。
その中で、子どもたちの興味関心は少しずつ「虫」へと向かっていきました。
地面に目を向け、草の陰をのぞき込み、立ち止まる時間が長くなっていきます。

ある日は、ひとりの子が「なんか、うごいた」と、地面を見つめながら言いました。
その声に気づいた周りの子どもたちも集まり、同じ場所をのぞき込みます。
見失ってしまっても、すぐに離れようとはせず、しばらくその場で探し続ける姿がありました。
また、虫のことが気になり園に帰って本棚の虫図鑑をみんなで見たり、以前の撮った写真と見比べてみたりしました。

プロジェクターを使って写真を大きくしてみんなで見て、違いを探してみたりもしました!

こうしたやりとりを重ねる中で、虫は「見つけたら終わり」の存在ではなく、
どんな虫がどこにいるのか、この虫はどうしてここにいるのか、という問いを持つようになりました。
7月頃には子どもたちから「虫の地図をつくりたい!」「知らない虫をもっと見つけたい!」と声があがるようになりました。

子どもたちの問いが形になった虫地図づくり

探索を続ける中で、子どもたちの中には共通の疑問が生まれていきました。
『虫はいつも、どこにいるのだろう?』
その思いをみんなで共有するために生まれたのが、虫地図です。

保育室内に大きな紙を広げ、いつも行く公園のおおまかなレイアウトだけ保育者が書きました。
そこに、子どもたちはこれまでの散歩の記憶を思い出すように、クレヨンを手に取り描き始めます。
はじめは原っぱやお砂場など、場所を表す色塗りからはじまっていきます。

しばらく描き進める中で、虫そのものを描くことの難しさに気づく子どもたちもいました。
どう描いたらいいのか、手が止まり、顔を見合わせる姿が見られます。

すると、子ども同士で自然と話し合いが始まりました。
これまで散歩で撮った写真や、図鑑に載っている写真を貼ったらどうだろう。
描くことにこだわらず、見たものをそのまま使うことになりました。

写真や図鑑を貼ることで、思い出がより具体的になり、
「ここで見た!」
「ここはまだ探していないよ」
と、場所と経験が少しずつ整理されていきました。

「先生これどこだっけ?」というような正解を求めるような疑問は
「どうだったかな?」「お友だちは知らない?」などの声かけにぐっととどめました。

すると
「みんなー!これどこにいたっけ?」
「これ○○だから○○にいたよ!」
「ありがとう!」
というやりとりが自然に生まれ、さらに
「そういえば○○ってどうして?」
という新しい問いや不思議が生まれました。

子どもたち同士でたくさん話し合い、相談し、提案し、決めて、進めていく姿がそこにはありました。
地図の上には今までに見つけた虫と、これから探したい場所がどんどん追加されていきました。
子どもたちはこの虫地図を手に、「たしかめに行こう」と、もう一度探索へ出かけることになります。

地図を持って、もう一度探索へ!室内での気づきが、実体験につながる瞬間

完成した虫地図を持って、子どもたちは再び公園へ出かけました!
地図は縮小コピーし、歩きながら見比べられるように工夫しました。

公園に着くと、子どもたちは立ち止まり、地図と目の前の景色を行き来させながら進んでいきます。
虫地図通りにアリを見つけられた場所もあれば、以前てんとう虫がいたところに今はいないことに気づく場面もありました。

その近くでセミの抜け殻や地面の穴を見つけ、穴はアリの巣かもしれないと考えて穴をのぞき、少し掘ってみる子どもたち。
すると、出てきたのはアリではなく、別の虫でした。
子どもたちは驚きながら、この虫はアリさんからお家を借りているのかもしれない、という声も上がりました。
地図に描いた場所に虫がいないと、他の場所も探してみようと自然に探索は広がっていきます。

「虫さんのおうちは、こわいのが来ないところにあるんじゃない?」
「だから、土の中とか、木の上なのかも」
「見えないところに、かくれてるんだね」
見つけたこと、見つからなかったこと、別の虫との出会い。
それら一つひとつをつなぎ合わせながら、子どもたちは自分たちなりの答えを導き出していきました。
発見や疑問を持ち寄り、相談し、考えを重ねながら、探究を深めていく成長した子どもたちの姿がありました。

活動を通して見えてきた子どもたちの変化

子どもたちのワクワクが最も伝わってきたのは、自分たちで見つけ、記録し、振り返ったものが、再び実体験につながった時でした。

自分たちが撮った写真を見る時。
拾ったものを触り、じっと観察する時。
地図を見ながら、以前見つけたものを再び見つけた時。
前と違うことに気づいた時。

お散歩中に気になったことを、室内でみんなで調べ、さらに屋外での体験と結びつくことで、子どもたちの興味はより深まっていきました。

探究活動を通して生まれた 保育者の葛藤と気づき

今回の活動は、保育者自身の関わりを見つめ直す機会にもなりました。
活動が盛り上がる中で、子どもたちについ言い過ぎてしまったかもしれない、話を広げすぎてしまうのではないか、と迷う場面もありました。

虫に対する興味の強さは、子ども一人ひとり異なります。
好奇心旺盛な子が話しすぎてしまい、他の子が話しにくくなっていないだろうか、と感じることもありました。
けれど、それは「いけないこと」ではなく、その子のやりたい気持ちがあふれている姿なのではないか。
もっとその欲を満たしてあげられる機会をつくれたのではないか、と次に活かせる振り返りとなりました。

また、目立つ子だけでなく、普段あまり前に出ない子の興味関心にも、より丁寧に目を向ける必要性を感じました。
興味がないように見える子に、どう探究のきっかけをつくるのか。その難しさと向き合う機会にもなりました。

園全体としての学び

探究活動を通して、子どもたちの「知りたい」「やってみたい」という気持ちは確かに育っていきました。
一方で、その多くが「その場限り」になってしまうことへの課題も見えてきました。

本当の意味で探究心を育んでいくためには、家庭とのつながりがより大切なのではないかと考えるようになりました。
活動の様子は園内掲示を通して伝えてきましたが、園内掲示に留まらず、他の方法も模索した方よいのではと振り返る機会にもなりました。

そこで今年の運動会では3歳児クラスは虫を捕まえる競技を加えてみました。
日ごろの取り組みや子どもたちの興味を反映させた競技であることを保護者様にお伝えしました。競技を楽しむ子どもたちの姿からも子どもの虫に対する関心の高さを理解していただけたようでした。

また、今は冬であまり虫がいませんが、来年の春に親子で楽しく新しい発見ができるように今回の虫地図のアレンジ版をご家庭に配布を検討ています。少し余白をつくり、親子で新しく見つけた虫を書き込めるようにと考えています。
今年度の子どもたちの学びが、来年の春にさらにご家庭でも深まるようにきっかけをつくっていきます。

おわりに

自然の中で生まれた小さな気づきから始まった今回の探究活動。
子どもたちは、見て、触れて、考えて、伝える経験を重ねてきました。
そのそばで、保育者もまた、迷い、立ち止まりながら、子どもの探求心をどう支えるかを考え続けてきました。

クレアナーサリー千住大橋ではこれからも子ども一人ひとりの興味の種に目を向け、ご家庭とも協力しながら、日常の中で子どもたちの学びを育んでいきます。
   

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