保育園で冬に感染症が流行るのはなぜ?

冬の保育園では、空気が乾燥することでウイルスの活動が活発になり、飛沫感染から呼吸器系の感染症が流行しやすくなります。
保育園では保育士さんと職員、子どもたちが一緒に日頃の手洗い・うがい・換気などを徹底し、予防策を習慣化することが大切です。
さらに、子どもたちや保護者様を巻き込み、みんなが健康への意識を持つことが感染症対策につながります。

保育園で冬にかかりやすい主な感染症

保育園で冬に流行りやすい感染症にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、代表的な6つの感染症の特徴と注意したいポイント、登園の目安を紹介します。
参考資料:厚生労働省 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)2023年10月一部修正

インフルエンザ

インフルエンザは、毎年冬になると学校や地域などで流行する代表的な感染症です。
保育園の職員や保護者様には、流行期に入る前の10月から11月の予防接種を呼びかけましょう。また、乳幼児の予防接種は生後6ヶ月から可能です。12歳(満13歳)未満の子どもは抗体ができにくいため、1年間に2回の接種が推奨されています。
保育園での感染拡大を防ぐためには、日頃から手洗い・うがい・消毒を徹底することが大切です。

インフルエンザの概要

  • 病原体 インフルエンザウイルス
  • 主な症状 突然の高熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状、鼻汁、咳などの気道症状など
  • 子どもの様子 38℃以上の高熱、ぐったりしている、息苦しそうにしているなど
  • 感染経路 咳や鼻水、おもちゃやタオルの共有などから感染
  • 登園の目安 発症後5日経過し、かつ解熱後3日経過していること(乳幼児の場合)


RSウイルス感染症

RSウイルスは乳幼児がかかりやすい呼吸器感染症で、2歳までにほぼすべての子どもが感染するといわれています。
特に生後6ヶ月未満の乳児では重症な呼吸器症状が生じる場合があり、入院が必要になるケースも少なくありません。
保育園ではRSウイルスの流行状況を把握し、「0歳児と1歳児以上のクラスは互いに接触させない」などの配慮が求められます。

RSウイルス感染症の概要

  • 病原体 RSウイルス
  • 主な症状 鼻水、くしゃみ、咳、発熱など
  • 子どもの様子 咳が出て眠れない、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音など
  • 感染経路 咳や鼻水、おもちゃやタオルの共有などから感染
  • 登園の目安 呼吸器症状がなくなり、全身状態がよいこと


ノロウイルス感染症

ノロウイルス感染症は、嘔吐や下痢、脱水を伴うウイルス性胃腸炎のひとつです。
罹患者の便や嘔吐物にはウイルスが多く含まれているため、集団生活ではトイレや園内での汚物処理が不十分な時に空気感染を引き起こすケースがあります。
保育園では、トイレでの排便後やおむつ処理後の手洗い・消毒を徹底することが重要です。

ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス感染症)

  • 病原体 ノロウイルス
  • 主な症状 主に嘔吐、吐き気、下痢、腹痛、37℃程度の微熱など
  • 子どもの様子 突然の嘔吐、胃がムカムカするなど
  • 感染経路 排便後の不十分な手洗い後に触れたタオルやおもちゃなどから感染
  • 登園の目安 嘔吐、下痢などの症状がおさまり、普段の食事がとれること


ロタウイルス感染症

ロタウイルス感染症は、冬から春にかけて広がりやすいウイルス性胃腸炎です。流行性嘔吐下痢症をおこす感染症で、6ヶ月から2歳までをピークに、5歳までにほぼすべての子どもが感染するといわれています。
また、ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス感染症)にかかると、保育園や地方自治体によっては登園許可証の提出が必要になる場合があります。保育園の規定を確認し、必要な場合は保護者様へ周知しましょう。

乳幼児嘔吐下痢症(ロタウイルス)の概要

  • 病原体 ロタウイルス
  • 主な症状 嘔吐、下痢、白色便、脱水、けいれんなど
  • 子どもの様子 水のような下痢、嘔吐、発熱、腹部の不快感など
  • 感染経路 排便後の不十分な手洗い後に触れたタオルやおもちゃなどから感染
  • 登園の目安 嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること


溶連菌感染症

溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう)は、毎年冬と、春から初夏にかけての2つの時期に流行する感染症です。症状が現れ始める時期に感染が広がりやすく、保育園や家庭内で移りやすいといわれています。
また、扁桃炎やとびひなどの合併症を伴うこともあるため、症状が治まっても抗菌薬を飲み続ける必要があります。
保育園での感染拡大を防ぐには、手洗い・うがい・消毒の徹底が必要です。

連溶菌感染症の概要

  • 病原体 溶血性レンサ球菌
  • 主な症状 扁桃炎、伝染性膿痂かしん(とびひ)、中耳炎、肺炎など
  • 子どもの様子 のどに強い痛み、苺のようにぶつぶつとした舌、全身の発疹、咳、頭痛など
  • 感染経路 咳やくしゃみでの飛沫感染、タオルやおもちゃを介した接触感染
  • 登園の目安 抗菌薬の内服後、24~48時間が経過していること


マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、夏から冬にかけて流行する感染症のひとつです。大人よりも14歳以下の子どもがかかりやすいため、保育園や小学校などで広がりやすい感染症です。
2~3週間の潜伏期間を経て徐々に咳が激しくなり、数週間続く場合があります。咳が出ている子どもにはマスク着用を促したり、園内では手洗いや咳エチケットを徹底しましょう。

マイコプラズマ肺炎の概要

  • 病原体 肺炎マイコプラズマ
  • 主な症状 激しい咳、発熱、頭痛、下痢、嘔吐など
  • 子どもの様子 呼吸がしにくい、激しい咳で眠れない、ぐったりとしているなど
  • 感染経路 咳やくしゃみでの飛沫感染。家族内感染や再感染がみられることもある
  • 登園の目安 発熱や激しい咳が治まっていること


次の記事では、夏の保育園で流行しやすい感染症と対策のポイントを紹介しています。
子どもたちや保護者様への呼びかけ方法も詳しくお伝えしているので、ぜひご覧ください!

保育園でできる冬の感染症対策

冬の保育園での感染症拡大を予防するには、毎日の対策がカギになります。
続いて、保育園で流行しやすい冬の感染症を防ぐためにできる予防策を紹介します!

手洗い・うがいを徹底する

保育園での感染症拡大を防ぐには、年間を通して手洗いとうがいの習慣を徹底することが大切です。子どもたちに指導する時は、保育士さんやお友達と一緒に手遊び歌を歌いながら練習すると楽しく身に付けられます。
特に感染症が流行しやすい季節は、次の例を参考にこまめに手洗い・うがいを行いましょう。

保育園で手洗い・うがいをするタイミングの例

  • 保育園に着いた時
  • 給食の前(配膳前、調乳前も)
  • 外遊びの後
  • おもちゃや遊具で遊んだ後
  • トイレの後
  • おむつ交換の後
  • 動物や植物を触った後


アルコール消毒を行う

保育園内での接触感染予防策として、アルコール消毒の実施も高い効果が期待できます。
手洗い後の手指や、洗面所の蛇口、トイレの便器、遊んだ後のおもちゃやなど、子どもや職員が手を触れる部分をアルコールスプレーやウェットティッシュなどで消毒しましょう。
職員間では、消毒を行う時間や当番を決めてチェックリストで管理すると漏れを防げます。

咳エチケットを取り入れる

保育園内で咳やくしゃみをする時は、ウイルスや細菌が周囲に飛ばないように、マスクやハンカチ、袖などで鼻や口を覆う「咳エチケット」を心がけましょう。
保育士さんから子どもたちに指導する時は、はじめにジェスチャーでお手本を示し、みんなでまねをしながら練習するとスムーズです。

こまめに換気を行う

保育園内での飛沫感染を防ぐために、季節を問わず室内を換気する習慣を取り入れましょう。
換気方法は部屋の2方向の窓を開け、可能な限り常時窓を開ける(困難な場合は1時間に2回程度、数分間窓を全開にする)方法が理想的です。
保育室内の室温が冬は20℃~23℃、夏は26℃~28℃になるように、その日の天気と気温をみながら調節します。

加湿器を設置する

冬は空気が乾燥するためウイルスが活発に活動し、感染症が広がりやすくなります。
保育園でも加湿器を設置し、ウイルスが浮遊しにくくなる60%前後の湿度を保ちましょう。
同時に、適切な湿度を保つと肌の乾燥による肌荒れやかゆみ、静電気の発生も抑えることができます。

規則正しい生活を心がける

冬の感染症に負けない免疫力をつけるには、日頃から規則正しい生活を送ることも重要です。
毎日決まった時間にバランスのよい食事と十分な睡眠をとると、感染症予防につながります。
また、日頃から体調管理を意識していると自分自身や子どもたち、周囲の体調不良にも敏感になるため、感染症の兆候に早く気付き、迅速に対処しやすくなります。

保育士や職員が感染症にかかった時の対応策

保育士や保育園の職員も、日頃からどんなに健康管理に気を付けていても感染症にかかることがあります。
ここでは、保育園の職員が感染症にかかってしまった時の対応策と遠慮なく休める環境を作るアイデアを紹介します。

速やかに休養をとる

保育園での勤務中に体調に異変を感じた場合は、速やかに同僚や上司に報告し、休養をとりましょう。感染症の恐れがある場合は、医務室や隔離された部屋などで静養します。
いざという時のために、勤務中に体調不良になった場合のマニュアルや医療機関などをまとめておくのもおすすめです。
無理して勤務を続けると子どもたちや保護者様、職員に感染が拡大する恐れがあるため、少しでも異変を感じたら熱を測ったり周囲に報告したり、行動に移しましょう。

保育園に連絡する

保育士さんや職員が自宅で体調不良に気付いた際は、できるだけ早く保育園に連絡しましょう。
シフトの変更や担当業務の引き継ぎも、時間に余裕があったが方より適切な対策を講じやすくなります。
保育園では、日頃から夜間や早朝に連絡が取れる緊急連絡先を共有し、いざという時にしっかり報告・連絡・相談を行えるようにしておきましょう。

完全に回復してから復帰する

感染症にかかった保育士さんや職員が復帰するタイミングは、医師の判断にゆだねましょう。
感染症の種類によっては、「咳がおさまったから」「元気に動けるから」と自分のタイミングで判断すると、保育園内で感染が広がってしまう場合があります。
医療機関での指示や自分の体調をしっかり確認し、完全に回復してから職場に復帰することが重要です。

緊急時の人員体制を確認する

いざという時も安全に保育にあたれるように、平常時のうちに保育園の人員体制や役割分担を整理しましょう。
体調不良にもかかわらず「人手が足りないから」「職場に迷惑がかかるから」と無理に出勤すると、感染拡大につながります。
特に感染症が流行りやすいシーズンは職員同士が気を遣わずに休める体制を整え、全職員が共有しましょう。

保育園の冬の感染症対策は、日頃の予防と迅速な対応が大事!

冬の保育園では、インフルエンザやウイルス性胃腸炎などの感染症が流行しやすい傾向があります。
保育園でできる予防策は、日頃の手洗い・うがい・消毒、こまめな換気、感染した職員が安心して休める環境の整備などが挙げられます。

職員はもちろん、子どもたちや保護者様を巻き込みながら園内全体で健康への意識を持つ姿勢が感染防止につながります。
保育園でみんなが元気に過ごせるように、積極的に対策に取り組みましょう!

次の記事では、年末年始にぴったりの出し物や遊びのアイデアを紹介しています。
保育士さんも忙しくなる年末年始のイベント企画に、ぜひご活用ください!
   

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