乳幼児は感染症にかかりやすい

乳幼児は、生後6ヶ月以降から母親から胎盤を通して受け取っていた免疫が減少し始めるため、ウイルスや細菌の刺激を受けやすくなります。
特に、自然免疫が発達し始める1歳半頃から免疫力が安定する6歳頃までの期間は、病気や感染症にかかりやすい期間です。
乳幼児が集団生活をしている保育園では感染症が流行しやすいため、清潔な環境を整えるとともに子どもたちや保護者様と連携をとりながら拡大防止に努めることが大切です。

保育園で流行りやすい夏の感染症

夏の保育園で流行しやすい感染症にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、代表的な5つの感染症の特徴と登園の目安を紹介します。
参考資料:厚生労働省 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)2023年7月一部修正

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは乳幼児がかかりやすい夏風邪の一つで、急な発熱とのどの奥に水泡ができる特徴があります。
水泡がつぶれて痛みが出ると、不機嫌や水分・食べ物をとりたがらないなどの様子がみられます。
ウイルスの感染力が強く保育園でも流行しやすいため、手洗い・うがいの強化などの対応が必要です。

ヘルパンギーナの概要

  • 病原体 コクサッキーウイルスなど
  • 主な症状 38~40度前後の高熱が1~3日間続く、のどの痛み、のどの発疹
  • 子どもの様子 機嫌が悪くなる、水分をとりたがらない、食欲がなくなるなど
  • 感染経路 咳や鼻水、便などから排出されたウイルスから感染
  • 登園の目安 発熱や口の中の水疱の影響がなく、普段の食事がとれること


手足口病

手足口病は生後6ヶ月〜5歳頃の乳幼児がかかりやすい感染症で、毎年夏に流行しやすい特徴があります。
口の中や手足の末端、お尻の割れ目、ひざなどに痛みのない水泡ができ、さらに発熱を伴う場合も。
ウイルスの感染力が強いため、保育園でも飛沫感染や接触感染から拡大しやすいでしょう。

手足口病の概要

  • 病原体 コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなど
  • 症状 口の中や手足の末端の発疹、発熱、のどの痛みなど
  • 子どもの様子 口の中の水ぶくれがつぶれて痛む、水分をとりたがらないなど
  • 感染経路 咳や鼻水、おもちゃやタオルの共有などから感染
  • 登園の目安 発熱や口の中の発疹の影響がなく、普段の食事がとれること


RSウイルス感染症

RSウイルスは、2歳までにほぼすべての子どもが感染するといわれている感染症です。
咳や鼻水などの症状から始まり、次第に咳がゼーゼーと苦しそうな呼吸音に変化します。
職員や保護者様が感染することもあるため、大人も手洗い・うがいの強化や清潔に保つことが大切です。

RSウイルス感染症の概要

  • 病原体 RSウイルス
  • 主な症状 鼻水、くしゃみ、咳、発熱など
  • 子どもの様子 咳が出て眠れない、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音など
  • 感染経路 咳や鼻水、おもちゃやタオルの共有などから感染
  • 登園の目安 呼吸器症状がなくなり、全身状態がよいこと


プール熱(咽頭結膜熱)

プール熱(咽頭結膜炎)は、プールの水を介して流行が拡大することで知られる感染症です。
やや長い発熱が続き、のどの腫れや痛み、結膜炎を起こすなどの症状がみられます。
乳幼児のあいだでは、咳やくしゃみだけでなく目やにから感染することもあるため、ハンカチやタオルの使い回しに注意が必要です。

プール熱(咽頭結膜炎の概要)

  • 病原体 アデノウイルス
  • 主な症状 4~6日の高熱、扁桃腺炎、結膜炎
  • 子どもの様子 目が充血している、涙が止まらない、のどが痛い、水分をとりたがらない、ぐったりしているなど
  • 感染経路 咳やくしゃみ、目やになどから感染
  • 登園の目安 発熱、充血などの主な症状がなくなってから2日を経過していること


とびひ(伝染性膿痂しん)

とびひ(伝染性膿痂しん)は、発疹が火のように全身に飛び移ることからとびひと呼ばれています。
あせもや虫刺され、湿疹などを引っかくことで感染し、発症します。
患部を覆っていれば登園しても問題はありませんが、広範囲にわたる場合は休むようにしましょう。

とびひ(伝染性膿痂しん)の概要

  • 病原体 黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌など
  • 症状 水ぶくれ、かゆみなど
  • 子どもの様子 水疱やかさぶたが鼻周囲や全身にみられるなど
  • 感染経路 患部をひっかいた手などから接触感染
  • 登園の目安 医師に確認のうえ、患部をガーゼや包帯などで覆っていれば登園可能


保育園でできる夏の感染症対策

保育園での感染症拡大防止は、日々の対策がカギになります。
続いて、保育園で流行しやすい夏の感染症を防ぐためにできる対策を紹介します。

体調不良の子どもを隔離する

在園中の子どもに体調不良や感染症と思われる症状がみられる場合は、ほかの子どもへの感染を防ぐために、速やかに医務室などの離れたスペースに移動させます。
看護時は室内の換気を行い、職員の感染を防ぐために専用のエプロンや手袋を着用しましょう。
保護者様に連絡し、子どもの症状を伝え、お迎えに来ていただくようにお願いをします。

マスクの着用

空気感染を予防するために、保育士さんはマスクを着けましょう。
ただし、2歳未満の子どもは呼吸がしにくくなる、顔色が分かりづらくなるという理由でマスクの着用が推奨されていません。
厚生労働省では就学前の子どものマスクについて一律着用を求めていないため、マスクを着けない場合は手洗い・うがいなどしっかり行い、感染防止に努めましょう。
参考資料:厚生労働省 Microsoft PowerPoint - 別紙2(子どものマスク着用について)

こまめに換気をする

空気感染を防ぐために、教室の窓やドアを開けてこまめな換気を行いましょう。
保育園内で「15分に1回」や「○時と○時と○時」などのルールを決めると確実に実行できます。
また、必要に応じて空気清浄機や加湿器、除湿器を併用すると感染防止効果を期待できます。

清掃と消毒を行う

接触感染を防止するために、登園前や降園後などのタイミングをみて園内の清掃や消毒を行いましょう。
教室だけでなく、洗面台やトイレ、共用のおもちゃなど、子どもたちが触れる場所すべてに目を配ります。
特に病原体がつきやすいトイレや子どもが嘔吐をした場所は入念な消毒が必要です。

手洗い・うがいを行う

食べ物や飲み物から感染する経口感染を防ぐには、手洗いが効果的です。
手洗いをすると、トイレやドアノブを触った時に付着したウイルスが食品に移るのを防げます。
調理前や食事前だけでなく、配膳前や調乳前にもしっかり手洗いを行いましょう。

石鹸の共有を避ける

接触感染を防ぐには、手を洗う時の石鹸の共有を避けることも大切です。
固形石鹸から液体石鹸に切り替えたり、手を触れずに石鹸を使えるオートディスペンサーを使用する方法もあります。

保育園職員の健康管理

保育園内での感染症拡大を防ぐには、保育士さんや職員自身の健康管理が重要です。
日頃から栄養バランスのとれた食事や規則正しい生活を心がけましょう。
また、万が一体調不良になった場合には安心して休める環境を整えることも大切です。

次の記事では、アルファコーポレーションの保育園で行った新型コロナウイルス感染症対策を紹介しているので、あわせてご覧ください。

感染症予防のための子どもたちへの声かけ方法

保育園での感染症を防ぐには、子どもたち自身に自分の体の状態を意識してもらうことが大切です。
ここでは、手洗いやうがいを身に付けるアイデアや健康に関心を持ってもらえる方法を紹介します。

手洗い・うがいの指導

手洗いとうがいの習慣を身に付けると、季節を通して病気や感染症の予防につながります。
歌や手遊び歌を交えて練習すると、子どもたちにとっても楽しい時間になるはず。
子どもの年齢に応じて保育士さんがフォローしながら、毎日の習慣として取り入れていきましょう。

保育園で手を洗うタイミングの例

  • 保育園到着時
  • 食事の前(配膳前、調乳前も)
  • トイレの後
  • おむつ交換の後
  • 外で遊んだ後
  • おもちゃで遊んだ後
  • 手が汚れた時
  • 動物や植物を触った後


咳エチケットの指導

咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際にウイルスや細菌が周囲に飛ばないように、マスクやハンカチ、手、袖などで鼻や口を覆うことです。
保育園では、子どもたちに咳エチケットが必要な理由を伝えながら、保育士さんのジェスチャーを真似して鼻や口を押さえるポーズを練習してみましょう。

子どもたちへの声かけの例

  • 「咳やくしゃみのなかにはたくさんのバイキンさんがいます」
  • 「バイキンさんがお外に飛んでいかないように、お口やお鼻を押さえましょう」
  • 「バイキンさんがついた手はすぐに洗おうね」


子ども自身に体調不良を伝えてもらう

感染症や病気に気付くには、子どもたち自身からも体の異変を訴えてもらうことが大切です。
しかし、年齢が小さいうちはどのように体調不良を伝えたらよいかわからない子どももいるかもしれません。
保育士さんから具体的な声かけを行うことで、子どもたちの意思表示をうながしましょう。

子どもたちへの声かけの例

  • 「体のどこかが痛い時やかゆい時は、先生やおうちの人に教えてね」
  • 「お友達の様子がいつもと違うなと思ったら、すぐに先生を呼んでね」
  • 「病気は早く見つけた方が早く治りやすいよ」


感染症予防のための保護者様への声かけ方法

保育園での感染症拡大を防止するには、保護者様への呼びかけも大切です。
最後に、保育園から保護者様への情報提供の方法や協力をお願いする際のポイントを紹介します。

感染症の情報と対応方法を共有する

保育園では、子どもが感染症になった場合に保護者様にお願いしたいことを明確にしておきましょう。
登園停止基準や登園の目安などをリストにまとめ、もしもの時に保育園と保護者様がスムーズに対応できるように対応方法を共有することが大切です。

保護者様と共有したい内容の例

  • 登園届が必要な感染症の種類
  • 保育園で流行りやすい感染症の主な症状
  • 発熱や体調不良の場合の出席停止基準
  • 感染症になった場合の出席停止基準
  • 保育園への連絡方法
  • 感染症ごとの登園の目安
  • 保護者様に発熱や感染症がある場合の対応方法


おたよりや連絡帳で呼びかける

保育園で夏に流行りやすい感染症を保護者様全体に共有するには、保育だよりで発信する方法もあります。
また、各家庭に個別にお願いや相談をする時は連絡帳を使用します。
子どもの様子や変化を具体的に伝えることで、保護者様に安心していただけるでしょう。

予防接種の状況を管理する

保育園では、子どもたちが予防接種を受けたかどうかを管理することが望ましいでしょう。
予防接種のチェックリストを作成し、罹患歴や接種歴を一目でわかるようにしておくと便利です。
さらに、入園説明会や面談の際には予防接種に関するアプローチを行うと、保護者様の認識や確認をうながすよい機会となります。

保育園の夏の感染症対策は清潔な環境と情報共有が大切!

長時間の集団生活を行う保育園では、子どもたちが感染症にかかりやすく、園内で流行することがあります。
特に夏は、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)などの夏風邪に注意が必要です。

感染症の拡大を防ぐには、日頃の清掃や消毒、換気などの清潔な環境作りが大切です。
さらに、保護者様や子どもたちにも声かけを行い、健康への意識を持ってもらうことが感染防止につながります。
保育園でみんなが元気に過ごせるように、積極的に対策に取り組みましょう!

次の記事では、保育園での熱中症対策や虫歯予防について紹介しているので、ぜひご覧ください。
   

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