保育ドキュメンテーションとは?

保育ドキュメンテーションとは、子どもたちの活動や成長過程を記録し、観察・分析する手法のことです。
具体的には、子どもが日々どのような遊びや活動に取り組んでいるか、活動を通してどのように成長しているかを、文章や写真、動画、子ども自身が制作した作品などを用いて継続的に記録します。

保育士さんが一人ひとりの子どもの興味や発達に注目することで保育の質が向上し、子どもたちも保育園や幼稚園でのびのびと過ごすことができます。さらに、日頃の保育を「見える化」した記録物は、保護者様や職員間の情報共有にも役立ちます。

保育ドキュメンテーションを取り入れるメリット

保育ドキュメンテーションを取り入れると、子どもたちや保護者様はもちろん、保育園全体にプラスの影響をもたらします。
ここでは、保育ドキュメンテーションを取り入れる主なメリットを紹介します。

保育の質が向上する

保育ドキュメンテーションを通じて、保育士さんは自らの保育実践を振り返ることができます。
自分の保育の良かったポイントと改善が必要なポイントを客観的に見直す機会を得られるため、保育士さん自身のスキルアップや工夫改善のアイデアにつながります。

保護者様とのコミュニケーションが円滑になる

保育ドキュメンテーションを通して子どもに関する情報共有が活発になると、保護者様に安心感が生まれ、保育園との信頼関係が深まります。
保護者様が家庭で感じる我が子への疑問や不安にも、保育園での姿を通じて解決の糸口を提供できたり、サポートしやすくなったりするでしょう。

保育士同士の情報共有がスムーズになる

保育ドキュメンテーションで記録した資料は、保育園の職員同士の情報共有や引き継ぎにも活躍します。
複数の保育士さんが同じ子どもやクラスを担当する場合は、ドキュメンテーションを通じてその子どもの様子や興味、課題を共有すると、一貫した対応が可能になります。

子どもたちの自信につながる

保育ドキュメンテーションを取り入れると、子どもたちも自分自身の行動や頑張ったことを視覚的に確認できます。
自分ができるようになったことや学んだことを自覚すると自己肯定感や達成感が高まり、新たなチャレンジへの意欲が生まれます。

長期的な保育園運営に役立つ

子どもたちの保育園生活を長期的な記録として残せる保育ドキュメンテーションは、保育園にとっても貴重な資料となります。
今後の保育にも「子どもたちにとって無理のないプログラムを組もう」「このような遊びを取り入れたら子どもたちが主体的に楽しんでくれるはず」のように、工夫や改善をプラスするきっかけになるでしょう。

保育ドキュメンテーションの書き方と具体例【7ステップ】

続いて、実際に保育ドキュメンテーションに取り組む手順を7つのステップにわけて紹介します。
保育の現場での具体例やポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね!

①テーマを設定する

最初に、保育ドキュメンテーションの目的やテーマを考え、子どものどのような活動や成長に焦点をあてるかを決めておくと記録しやすくなります。次の例を参考に、「何を記録するか」「何を達成したいか」を考えてみましょう。

保育ドキュメンテーションのテーマ例

  • 「子どもたちのチームワークの発達を追う」
  • 「自然とのふれあいを通じて得た学びを記録する」
  • 「日常の遊びで想像力を発揮する場面を観察する」


②写真や動画などの記録方法を決める

続いて、どのような方法で子どもの様子を記録するかを決めます。文章だけでなく、写真やビデオを使うと子どもたちの表情や動きなどを視覚的に記録できます。
保育ドキュメンテーションでは、記録方法を統一しておくと後から振り返る際にもわかりやすいでしょう。

③子どもたちを観察しながら記録する

保育ドキュメンテーションの基盤は保育者による観察です。テーマに沿って子どもたちの行動や言葉に注目します。
週に1回などの頻度を決めたり特定のイベントに焦点を当てたりすると、観察に集中しやすくなります。
次のポイントを意識しながら、客観的な視点で具体的な行動を記録することが重要です。

保育ドキュメンテーションでの観察ポイント

  • 子どもがどのように遊んでいるか
  • 子どもたち同士がどのように関わっているか
  • 新しいことにどのように挑戦しているか


④保育ドキュメンテーションを整理する

記録した資料を、保護者様や子どもたちが見てもわかりやすい形でまとめます。整理することで、保護者様や職員同士の情報共有がよりスムーズになります。
例えば、「チームワークの発達」「運動能力の成長」のようなテーマごとにカテゴリー分けをしたり、日付や時期ごとに時系列で整理したりすると成長過程が一目でわかるでしょう。

保育ドキュメンテーションのまとめ例

  • 紙やアルバムに複数の写真を貼り、コメントや説明文を添える
  • 模造紙などの大きな紙にまとめ、保育園内に掲示する
  • 写真をメインとしたパネル展示を行う
  • オンライン上の写真アルバムにコメントを添える
  • オンライン上でテーマに沿った動画をまとめる


⑤分析と考察を行う

保育ドキュメンテーションでは、記録した内容を分析し、子どもの成長や変化について考察することも大切です。
観察したことをただ書き留めるだけでなく、「どのような成長が見られたか」「どのような新たな興味や課題が生まれたか」を考えます。

⑥保護者様や職員と共有する

完成した保育ドキュメンテーションは面談や園内掲示などを通して保護者様や職員と共有し、フィードバックをもらいます。
保護者様にとっては、子どもの成長を知る貴重な情報源となり、保育士同士も子どもの情報を共有することで保育の一貫性を保てます。

⑦今後の保育活動に活かす

保育ドキュメンテーションをもとに、子どもの興味や成長のステージに合わせた新しい活動や次に挑戦する課題を見つけます。
例えば、「○○ちゃんが興味を持っている積み木遊びをさらに発展させ、他の子どもたちと協力して大きな建物を作る活動を計画する」「一人で遊ぶことが多い○○くんの社会性の発達を見守る」などが挙げられます。

▼次の記事では、書籍を通して保育ドキュメンテーションを学び、実践している社員のインタビューを紹介しているので、ぜひご覧ください!

保育ドキュメンテーションを実践する際のポイント

保育ドキュメンテーションを取り入れる際は、ポイントを押さえるとより正確な記録や情報共有につながります。
子どもたちの言動を客観的に観察しながら、効果的な資料を作成しましょう。

客観的な観察を心がける

保育ドキュメンテーションでは、保育者の主観的な判断を避け、客観的な視点から子どもの行動を捉えることが重要です。子どもの具体的な行動や表情、言葉をそのまま記録します。
観察する際は、まずは「子どもが何をしているのか」に注目し、考えや感じたことを深掘りしていきましょう。

子どもの個性を尊重する

保育ドキュメンテーションでは、「すべての子どもが同じ成長を遂げるものではない」と理解したうえで、それぞれの個性を尊重することが大切です。
子どもによって得意なことや苦手なことが異なるため、全員に同じ基準を適用せず、個々の特性やペースを大事にしながらそれぞれの成長に注目します。

子どもの視点を大切にする

観察・記録する際は、子どもたち自身の考えや感情をできるだけ取り入れるとドキュメンテーションの質が高まります。
子どもの考えや感情を引き出すために、「なにをしているところかな?」「どうしたらできるかな?」と質問したり、子どもの言葉をそのまま記録したりするとよいでしょう。

継続的な記録を心がける

ドキュメンテーションは一日限りの単発的なものではなく、子どもの成長や変化を追い続けることが大切です。定期的に記録し振り返ることで、子どもたちの長期的な成長の傾向や課題を見つけられます。

保育ドキュメンテーションの活用事例【保護者様や職員との情報共有】

保育ドキュメンテーションの中でまとめた資料は、保護者様や職員同士の情報共有に役立ちます。
ここでは、保育園での活用方法や具体的な事例をみていきましょう。

写真にコメントを添えて掲示する

保育ドキュメンテーションを実践する保育園や幼稚園では、写真にコメントを添えて掲示する方法が多く採用されています。おたよりサイズの紙や巨大な模造紙を使う方法などのさまざまな方法があります。
写真に添えるコメントは、子どもが実際に発した言葉や「何をしているか」などの客観的な事実に注目しましょう。

オンラインで写真や動画を共有する

保育園や幼稚園の中には、子どもたちの写真や動画をオンラインで保護者様と共有している園もあります。
忙しい保護者様が自宅で確認できるのはもちろん、遠方に住む祖父母や親戚にも共有すれば、家族間のコミュニケーションにも喜ばれるでしょう。
ただし、オンラインを活用する際は必ずパスワードを設定し、個人情報が外部に漏れないように注意しましょう。

保護者様との面談に活用する

記録した資料は、保育士さんと保護者様との面談の場でも一目でわかりやすい資料として利用できます。
保育ドキュメンテーションをもとに子どもの成長過程を共有し、保育園や家庭でのサポート方法について話し合う際の参考になります。

子ども自身の振り返りにも活かす

記録した資料は、子どもたち自身が思い出や成長を振り返る際にぴったりのアイテムです。進級時や卒園式、卒園後の同窓会などにも利用できるでしょう。
「苦手だったピーマンを食べられるようになったな」「あの時、合奏での楽器練習を頑張ったな」というように過去を振り返ることで自分への自信や成長意欲が高まり、ポジティブな気持ちで前に進めるはずです。

職員同士のミーティング資料にする

子どもたちの成長記録は、職員同士が子どもたちの情報を共有する際に活用しましょう。
同じクラスの担当保育士や他のクラスの保育士と保育の成功例や課題をシェアすると、保育への意識や質が高まります。
また、子どもたちの進級時や職員の産休育休時などの引き継ぎの際もスムーズな対応につながるでしょう。

保育ドキュメンテーションは保育スキル向上や情報共有に役立つ!

保育ドキュメンテーションとは、子どもたちの活動や成長過程を記録し、観察・分析する方法です。

日頃の保育を写真や動画を用いて「見える化」すると、保護者様とのコミュニケーションや職員間の情報共有がよりスムーズになります。
さらに、日頃の保育を振り返ることで、保育士さん自身のスキルアップや工夫改善のアイデアにも役立ちます。
保育ドキュメンテーションをきっかけに、一人ひとりの子どもの成長や変化に注目してみましょう!
   

関連する記事

関連するキーワード

著者